就任から3日で30の大統領令に署名【バイデン政権の方向性】

就任から3日で30の大統領令に署名【バイデン政権の方向性】

バイデン大統領、就任から3日で30の大統領令に署名

2021年1月20日(米国時間)からバイデン政権が始まりました。バイデン大統領は、就任から矢継ぎ早に大統領令に署名し、その数は1月20日から1月22日の3日で30に上ります。

その30の大統領令にうちの10はトランプ政権の政策を覆すものですが、米国においては、共和党・民主党の政権交代があると、前政権に対する「ちゃぶ台返し」をするのは当たり前で、恒例行事のようなものです。

本記事では、その30の大統領令を俯瞰して、バイデン政権の方向性を確認していきたいと思います。

Here are the 30 executive orders and actions Biden signed in his first three days

バイデン大統領が署名した30の大統領令リスト

以下のリストが1月20日から1月22日までにバイデン大統領が署名した30の大統領令です。
太字のものは、特に特徴的なものとして強調しています。

# 日付 分野 内容
1 1月20日 規制
OMBのディレクターに、規制の見直しを近代化するための推奨事項を作成し、トランプの規制承認プロセスを元に戻すよう指示
2 1月20日 倫理
行政府から任命された者に、個人的な利益のために行動することを禁じ、司法省の独立性を維持することを求める倫理誓約書に署名することを義務付ける。
3 1月20日 移民
米国内に安全な避難所を有するリベリア人に対する強制送還および就労許可の延期期間を2022年6月30日まで延長
4 1月20日 移民
国境の壁に資金を提供していた国の緊急事態宣言を閉鎖することにより、国境の壁の建設を中止する。
5 1月20日 移民 トランプの米国内での移民法執行の拡大を取り消す
6 1月20日 移民
トランプ政権によるイスラム教徒が多数を占める7カ国からのパスポート所持者の米国入国制限を取り消す
7 1月20日 移民
子供の頃に入国した不法滞在者に対する保護を元に戻そうとするトランプの努力の後、DACAを強化する
8 1月20日 国勢調査
非市民を国勢調査に含め、議会の議員を割り当てる必要がある。
9 1月20日 人権 性的指向または性同一性に基づく職場での差別の防止
10 1月20日 人権
トランプ政権の1776年委員会を廃止し、人種的平等を確保するための行動を見直すよう諸機関に指示
11 1月20日 環境
キーストーンXLパイプラインを中止し、環境に対する100以上のトランプ行動の見直しと逆転を政府機関に指示
12 1月20日 環境 30日でパリ協定に復帰する
13 1月20日 経済
連邦政府の学生ローンを利用している米国人に対する学生ローンの支払いと利息について、現在の停止期間を少なくとも9月30日まで延長する。
14 1月20日 経済
強制立ち退きと差し押さえに関する既存の全国的なモラトリアムを少なくとも3月31日まで延長する。
15 1月20日 コロナ
COVID-19対応コーディネーターの地位を確立し、バイデン大統領に直接報告し、ワクチンと医療機器の生産と配布の取り組みを管理する。
16 1月20日 コロナ
アンソニー・フォーシ博士がWHO代表団長に就任し、米国のWHOからの脱退を阻止
17 1月20日 コロナ
「100日間のマスキング・チャレンジ」を立ち上げ、米国人に100日間マスク着用を呼びかけ。連邦政府の建物、連邦政府の土地、政府の請負業者にマスクと物理的距離を要求し、州や地方政府にも同様の措置を取るよう求める。
18 1月21日 コロナ
米国のリーダーシップを回復し、国際的なパンデミック対応の取り組みを支援し、将来の脅威に対する強靱性を促進し、世界的な健康安全保障と世界的な健康安全保障アジェンダを前進させるための大統領指令。
19 1月21日 コロナ
COVID-19 Health Equity Task Forceを作成し、公平なパンデミック対応と復旧を支援
20 1月21日 コロナ
多くの電車、飛行機、船舶、都市間バスなど、空港や特定の交通手段でマスク着用を要求。海外からの旅行者は,米国に来る前にCOVID-19検査が陰性であることを証明しなければならない。
21 1月21日 コロナ
労働安全衛生局に対し、COVID-19に関する明確な指針を発表し、緊急暫定基準を設けるかどうかを決定し、労働者の健康および安全に関する要件を施行するようOSHAに指示するよう求める
22 1月21日 コロナ
教育省と保健福祉省に、学校、保育施設、高等教育機関の安全な再開と運営のためのガイダンスを提供するよう指示する
23 1月21日 コロナ 連邦政府が支援する地域予防接種センターの設立をFEMAに指示
24 1月21日 コロナ コロナウイルスのデータの収集、作成、共有、分析を強化
25 1月21日 コロナ
パンデミックの脅威に対応する治療薬の開発を促進するための前臨床プログラムを確立
26 1月21日 コロナ
米国のコロナウイルス検査を拡大するためにパンデミック検査委員会を設立
27 1月21日 コロナ
連邦緊急事態管理庁に、州兵と緊急物資の費用を全額負担するために州への補償を拡大するよう指示する
28 1月21日 コロナ
ワクチン接種、検査、および個人用保護具のためのサプライ品の製造と配送を迅速化
29 1月22日 経済
食料の購入に四苦八苦したり、景気刺激策を怠ったり、失業したりしている人々への支援を求める
30 1月22日 経済
連邦労働者に対する団体交渉力と労働者保護を回復し、15ドルの最低賃金の基礎を築く

現時点でのバイデン政権の政策のポイントは何か

大統領選の時からバイデン vs トランプの政策の考え方は対照的でしたが、この大統領令のリストにはバイデン大統領の特徴的な政策がよく表れているといえるでしょう。
(ただし、これらの大統領令は議会の承認が必要なものも多いため、すべてがそのまま実行されるとは限りません。)

全体を見渡して、まず目立つのは30の大統領令の半数近い14を新型コロナ関連が占めており、バイデン政権が、新型コロナ対策を重要視しているのは間違いありません。

一方で、経済対策関連の大統領令は4つしかなく、物足りないように見えますが、1人当たり1400ドル(約14万5000円)の現金給付を含む1.9兆ドル(約200兆円)規模の経済対策の内容は2月の上院・下院合同議会で明らかになる見通しです。

また、移民に対して厳しいトランプ政権から180度方向転換して、一気に「移民に優しいバイデン政権」を目指しています。大統領令とは別に、最短8年で移民が市民権を得ることができる道ができる法案を議会に提出しています(詳細は下記の過去記事をご参照)。

以下に、バイデン政権の特徴的な政策を含む大統領令のポイントをあげていきます。

【移民政策】

・トランプ政権から一転し、移民に優しい政策に方向転換(まとめ)
・強制退去処分の移民に対する執行を緩和する大統領令(#5)
・メキシコ国境の壁の建設を中止する大統領令(#4)
・イスラム教系7カ国からの米国入国制限を取り消す大統領令(#6)
・子供の頃に入国した不法滞在者に対する保護、DACAの強化(#7)
・大統領令とは別に、最短8年で移民に市民権を与える法案を議会に提出

【人権関連政策】
・移民も含めてマイノリティの人権を重視する政策(まとめ)
・性的指向または性同一性に基づく職場での差別の防止のための大統領令(#9)
参考資料

【環境およびエネルギー】
・温暖化を否定していたトランプ政権から転換し、気候変動を問題視しクリーンエネルギーにシフトをすすめる(まとめ)
・パリ協定に復帰するための大統領令(#12)
・キーストーンXLパイプラインを中止し石油/石炭/ガスからクリーンエネルギーにシフトするための大統領令(#11)

【経済対策】
・15ドルの最低賃金を実現するための大統領令(#30)
・1人当たり1400ドル(約14万5000円)の現金給付を含む1.9兆ドル(約200兆円)規模の経済対策の内容は2月に議会で明らかになる見通し

 

参考資料

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